桜色の涙

「宿泊学習の夜、何があったのか教えてくれる……?」


「俺、あの日は……」


今までにも、あのときの決断を後悔したことは何度かあった。


それでも、これが正解なんだって言い聞かせていた。これが幸せなんだって思っていた。



「星那と江崎くんがキスしているのを見たんだ」


実際に口に出すと胸がズキズキと痛む。


あのときのことは今でも忘れられない。あまりにもショックが大きくて忘れることなんてできなかった。



「そっか……。それで傷ついた表情をしていたんだね」


そう言う小谷さんの顔は今にも泣き出しそうで、それでも俺には触れる資格なんてない。


小谷さんの方が苦しいはずなのに、どうして俺の心配ばかりするの?


俺のせいで傷つけることになってしまったのに。
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