桜色の涙

「さっきの体育館での表情、私には広瀬くんのことを頑張って忘れようとしているように見えた」


星那が俺のことを……?


今日も彼女は江崎くんと楽しそうに笑っていた。俺のことなんて忘れたように笑っていたんだよ。


隣が俺じゃなくても星那が幸せならそれでいい。そう思って別れたのに。



「広瀬くんの知っている篠原さんはどんな人?」


突然、小谷さんは話題を変えるように問いかけてきた。


その顔はさっきとは打って変わって少し晴れやかだった。



「俺の中での星那は……」


星那との思い出がよみがえる。


初めて出会った日。一緒に夏祭りへ行った日。付き合った日。クリスマスデートの日。


たくさんの日々を一緒に過ごしてきた。そのどれもが大切で、絶対に忘れたくないと思っていた。
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