桜色の涙
だから渚には謝らなければならない。
『見たら後悔するのは自分だ』
『お前、篠原のこと……』
渚が言いかけた言葉の続きはきっと、好きなんだろとかそんな感じのことだろう。
渚は俺の気持ちに気づいていたから止めてくれた。それなのにひどいことをしてしまった。
「渚、昨日はごめんなさい」
思いきり頭を下げる。遠巻きに見ている人もいるけど、どうだっていい。渚と気まずくなるなんて嫌だ。
「……別に。気にしていないし」
だから顔上げろ、と。渚はそう言ってくれた。
あんな態度をとったのに見捨てないでいてくれるなんて優しいな。
「……ありがとう」
「ん、どういたしまして」
それから並んで教室へ向かうも、俺達の間には深刻な空気が流れている。