桜色の涙

と、視線を逸らした瞬間。目に入ったのは男子と一緒にいる浴衣姿の星那だった。


どうして他の奴といるんだよ。どうしてそんなに可愛い格好しているんだよ。俺だけに見せるんじゃなかったのかよ。



「……迅くん、行こ」


俺と目が合ってビクッと肩を震わせたかと思うと、隣の男子の手を掴んで逃げるように立ち去っていく星那。


あの男子、どこかで見たことがある。学校か?あの下校中に会った挙動不審な奴?


確か名前は、広瀬迅。さすがの俺もインパクトが強かったせいか覚えている。



「星那、待てって……!」


行くなよ。星那はずっと俺のものだろ。隣にいた女のことなんて忘れてふたりを追いかける。


頑張って手を伸ばすも星那には届かない。それどころかふたりはどんどん遠くへ行ってしまう。
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