桜色の涙
「あのさ、俺……」
ほら、言うんだ。渚には告げるって決めたんだから。
「星那ちゃんのことが好きなんだ」
彼氏がいる人を好きになるなんてダメだってわかっている。相手にも迷惑がかかるし、自分も報われない恋に傷つくことになる。
それでもこの想いは止められない。だから渚にだけは伝えようと思った。
「それくらい知っているし」
あぁ、やっぱり。渚も気づいていたんだね。だから助けてくれたんだ。
「でも、応援する気はないから」
「うん……!」
応援してほしかったわけじゃない。渚には隠しごとをしたくなかっただけ。
星那ちゃんと江崎くんの関係を崩そうなんて思っていない。叶わない恋だとわかっているから、俺はこの気持ちを封印するんだ。
相手に迷惑をかけないように。幸せを奪わないように。
傷つくのは俺だけで構わない。それでも星那ちゃんには幸せでいてほしい。
これからもこの気持ちは告げずに守り抜こう。そう決意を固くして教室に足を踏み入れた。