桜色の涙
今では、俺と星那は一緒に登下校をする仲にまでなった。
付き合っていると誤解されることもあったけど、星那は『私は別に構わないよ』と言ってくれた。
好きな人がいるくせに変なところで気をつかうんだ。
少し思い出に浸っていたけど、そろそろ星那の待つ玄関へ向かおう。そう思っていたときだった。
「広瀬?」
「え、ざきくん……」
静まり返っていたはずの校内に俺以外の足音が聞こえた。
そこにいたのは息を切らした広瀬だった。
汗をかきながら、何かを……誰かを探すように走っていたらしい。
「何してんの、こんなところで」
冷たく抑揚のない口調で尋ねる。すると、広瀬は息を落ち着かせながら。
「星那がどこにいるか、知らない……?」
まっすぐに俺の目を見てそう言う。
その目には覚悟と勇気が宿っているように見えて、なぜだか俺は……嬉しくなった。