桜色の涙
「なぁ、広瀬」
少し気まずい雰囲気の中、渇いた口を開く。俺の中にもう迷いはなかった。
「星那のこと、幸せにしてくれ」
「……うん、わかっているよ」
それだけ言うと広瀬は俺に背を向けてどんどん遠ざかっていく。
きっとまっすぐに星那のもとへ走っていくんだろうな。
「はぁ……」
俺、なんてことをしたんだろう。結局広瀬の背中を押すようなことをしてしまった。
星那にあんなに想われている広瀬が本当に羨ましい。
でも……これで良かったんだ。きっとそう思える日がくる。
なぁ、広瀬。星那のこと頼んだぞ。俺ができなかった分まで幸せにしてやってくれ。
俺は大丈夫。だって、星那との思い出はしっかり胸に刻まれているから─────。