桜色の涙

「好き」




「はぁっ、はぁ……」


小谷さんと話してから江崎くんに声をかけられて、俺は星那が玄関にいることを知った。


ふたりはやっぱり一緒に帰っているらしい。それを江崎くんから聞いたのが悔しいけど、もう俺の中に迷いはない。




「星那!」


ひとりで佇んでいる小さな後ろ姿。それが目に入った瞬間、急いで駆け寄る。


振り返った星那は……困惑したような顔をしていた。それでももう後悔したくないんだよ。



「星那のクリスマスを俺にくれませんかっ」


こんなに緊張したのはいつぶりだろう。その言葉を言い切るまでに、どれだけ臆病になったかわからない。
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