桜色の涙

「広瀬くーん!」


「橋本さん?」


どこからか俺の名前を連呼する声が聞こえてきてそちらを向くと、そこには得意気に笑う橋本さんの姿があった。



「あっ、園田くんも!」


渚のことを、いかにもついでのように言ったのが気に入らなかったんだろうか。


「……んだよ、うるさい」


少し不機嫌そうに適当に彼女をあしらう渚。でもその頬は緩んでいる。


彼女も、最初に呼んでいたのは俺の名前だったのに、今は渚にばかり視線が向いている。



彼氏と彼女、というよりも漫才コンビのようなふたりだけど、付き合ってからも仲がいい。


気をつかったりせずストレートな言葉で伝え合えるなんて羨ましいよ。
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