桜色の涙

「じゃあ決まりだね」


眩しい笑顔を向ける星那ちゃんはやっぱり可愛い。


「星那ちゃん、江崎くんのことは良かったの?」


聞きたくはなかったけど知りたかった。だって、あのときの言葉が耳に焼きついて離れないから。


『星那のことは渡さねーからな』


あんなこと言っていたのにお祭りに行かなくていいのかな?



「うん、悠大は……」


「用事があるんだもんねー。かわいそう、星那」


星那ちゃんの言葉を遮って橋本さんが続ける。寂しそうな顔をする彼女に、また胸がチクリと痛む。


江崎くんと行きたかったんだろうな。用事なら仕方ない。そう思っているのかな。俺は笑っている星那ちゃんが見たいのに。


ふたりは俺の入る隙間がないくらいに楽しそうで、想い合っている様子が伝わってくる。



だから俺のこの気持ちは叶わなくていい。


それでも、7月14日。この日だけはそばにいてもいいかな。星那ちゃんと過ごせる嬉しさに胸を踊らせていた。


────そこで何が待ち受けているかも知らずに。
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