桜色の涙
「好かれていなくてもいいよ。一緒にいられるだけで幸せなんだ」
体を離して彼女の目を見つめながらそう告げる。
好きになってはいけない人に恋してしまった。初めてこの気持ちに気づいたとき、確かにそう思った。
報われない一方通行の切ない恋。この勝負に勝てるわけがない。それだけはハッキリとわかった。
「ダメだよ。私は、迅と一緒になんていられない……」
あぁ、そうか。やっぱり俺と一緒にいるのは嫌なんだね。
それなら最初から言ってくれたら良かったのに、今更こんなこと言われても遅いよ。
俺はこんなに星那のことが好きなんだ。他の誰にだって譲りたくない唯一の光のような存在。
だから、君が別れを望むとしても俺は。
「嫌だ。もう離してあげないよ」
「えっ?じ、迅、ちょっと……!」
そう言って強く強く抱きしめる。この距離は少しのことじゃ埋まらないだろう。