桜色の涙
リビングへ杏と一緒に行くと、朝ご飯を食べようとする母さんがいた。
「母さん、おはよう」
挨拶をして食卓の席に着くと美味しそうな料理が目に入る。
前は冷めたご飯がラップに包まれて置いてあるだけだったのに、今はみんなで食卓を囲んで食べている。
新学期は朝から心があたたまるようなことばかり。今年は穏やかに過ごせそうだな。
「……迅、もう大丈夫なのね」
「え?」
朝ご飯も食べて学校へ行く準備も済ませて玄関へ向かおうとすると、母さんの呟きが聞こえてきて振り返る。
安堵の表情を見せてホッとしている様子に首を傾げた。
「2年生になったくらいかしら。ずっと元気がなかったでしょう?」
2年生になったばかりの頃。星那と別れて傷心中だった俺は、家でも学校でも空回りしていたに違いない。
母さん、気づいていたんだね。
俺の気持ちなんて誰も知らないと思っていたのに、こんなに近くに俺を見てくれている人がいたんだ。