桜色の涙
「でも、今は元気そうで安心したわ」
そう言って笑う母さんに心から感謝の気持ちが溢れた。
俺のことをこんなに大切に思ってくれていた。見ていないと思っていても気づいていたんだ。
「母さん、ありがとう。行ってきます」
「行ってらっしゃい」
自分の心のままに言うと、優しそうな声と微笑みが返ってきた。
「行ってらっしゃーい!」と杏の元気な声も聞こえてきて、俺は新しい道のりへ歩き出した。
◇◆◇
桜が舞う登校中の道。1年前も2年前もこの道で立ち止まっていたよね。
でも、今日が1番晴れやかな気持ちで見られている気がする。
「桜ってやっぱり綺麗だよね」
だって、隣にはそう言って笑いかけてくれる星那がいるから。
どんなに辛いことがあっても、必死に笑って生きている人がいる。
大切な人を幸せにしようと、気持ちを押し殺している人がいる。
どんなに泣きたくても、本音を見せずに強がる人がいる。
俺はそんな人を支えられたかな。そんな人の─────星那の力になれたかな。