桜色の涙

「でも、今は元気そうで安心したわ」


そう言って笑う母さんに心から感謝の気持ちが溢れた。


俺のことをこんなに大切に思ってくれていた。見ていないと思っていても気づいていたんだ。



「母さん、ありがとう。行ってきます」


「行ってらっしゃい」


自分の心のままに言うと、優しそうな声と微笑みが返ってきた。


「行ってらっしゃーい!」と杏の元気な声も聞こえてきて、俺は新しい道のりへ歩き出した。



◇◆◇




桜が舞う登校中の道。1年前も2年前もこの道で立ち止まっていたよね。


でも、今日が1番晴れやかな気持ちで見られている気がする。



「桜ってやっぱり綺麗だよね」


だって、隣にはそう言って笑いかけてくれる星那がいるから。



どんなに辛いことがあっても、必死に笑って生きている人がいる。


大切な人を幸せにしようと、気持ちを押し殺している人がいる。


どんなに泣きたくても、本音を見せずに強がる人がいる。


俺はそんな人を支えられたかな。そんな人の─────星那の力になれたかな。
< 367 / 374 >

この作品をシェア

pagetop