桜色の涙

「じゃあ行こっか!」


橋本さんの言葉で歩き始めた俺達だけど。


「ほら、早くっ!園田くん」


え、まさか……。彼女以外、驚いた表情で足を止めている。



「1時間後ここに集合ね!」


軽くウィンクをして、橋本さんは渚をつれて人混みの中へ紛れていった。


橋本さんが渚と行動ってことは、俺は星那ちゃんと一緒?


取り残された俺達には気まずい空気が流れている。ふたりきりなんて嬉しいけど、どうしよう。



「じゃあ私達も行こっか」


彼女は柔らかい笑みを浮かべる。


こんなに近くにいるのにその心に届かないなんて。目の前にいるのにこの手を伸ばしたらいけないなんて。



「ふたりきりなんて久しぶりだね」


なんて、いきなりそんなことを言うから不覚にも顔が赤くなってしまった。


「……あ、うん。そうだね」


ぎこちなく答える俺に彼女はクスッと笑う。ふたりきりなんて久しぶりなんだ。緊張しないわけないじゃん。



そんな思いも知らず彼女はずっと笑顔。本当にいつ見ても楽しそうだな。


今は散ってしまった桜が風にのって踊っているよう。彼女を見ているとそんな情景が目に浮かんで、つられて俺も笑顔になる。
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