桜色の涙
「星那ちゃんは何したい?」
周りの騒がしさにのみ込まれないよう大きな声で口を開く。
「うーん、何がいいかな?」
辺りをキョロキョロと見渡している。でも人が多すぎて背伸びしても見えないようだった。
どうしよう。心臓が落ち着かない。せっかくふたりきりになれたのに上手く話せないよ。
「あ、私あれ食べたい!」
彼女が指差したのはかき氷。いかにもお祭りって感じがして気分が上がる。
「じゃあ、俺買ってくるよ」
「えっ?私が欲しいだけだから自分で買うよ」
少しでもかっこよく見られたいから言ったのに。だから休んでいていいのに。
駆け出そうとすると腕を掴まれて、上目遣いで見上げられる。