桜色の涙

「そ、それなら、俺が買うから少し分けてくれる?」


「うん、わかったよ」


どうしても譲らない彼女にそう提案すると、渋々ではあったが了承してくれた。


「近くのベンチで休んでいて」と声をかけてから、さっそく列に並ぶことにした。



何味にするか聞いてなかったな。でもきっと、星那ちゃんなら……桜色のイチゴ味だよね?


さっきも視線の先にあったのはイチゴ味のかき氷だったし。そんな考えを巡らせているとあっという間に俺の番になった。



「イチゴ味ひとつ」


200円を渡してかき氷を受け取ると彼女ところへ急いだ。でも、座っていたベンチにその影はなかった。どうしたんだろう……。



心配になって辺りを探していると。


「迅くーん!」


遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた気がして慌てて振り返る。


星那ちゃん……?
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