桜色の涙
そこには、人混みに押し潰されそうになっている星那ちゃんがいた。
どうしてあんなところに……?
浮かんだ疑問よりも助けることの方が大切だから、回りなんて見えないくらい彼女を想って手を伸ばした。
「迅くんっ」
「星那ちゃん、こっち……!」
彼女に呼ばれたこの名前。それだけで心臓がドクンドクンと音を立て始めた。
そしてその体に辿り着いたとき。
「良かった……。ごめんね。もうはぐれないようにしなきゃ」
星那ちゃんはホッと安心した表情を見せてくれた。
────手を繋ごうよ。
言いかけた口を塞いでそっと言葉を閉じ込めた。ダメだよ、何を言おうとしているんだ。
言わないって決めたのに。この気持ちは隠しておくって誓ったのに。
こんなにそばにいると伝えたくなる。君が好きだよ、と。