桜色の涙
そう、隣には星那ちゃんではない別の女の子がいる。
嘘だよ。だってそんな……。ふたりはあんなに幸せそうだったのに。
少し先に広がる光景を未だに信じられずポカンと口を開けていた。
「じ、んくん……」
切なそうに俺の名前を呟く彼女を前にして心の中で叫ぶ。
確かに俺は星那ちゃんのことが好きで、あわよくば俺のものになってほしいと願っていたのも本当の話。
でも、絶対にこの気持ちは伝えないって決めていたんだ。
もしも告げたら、彼女は優しいから気をつかって迷惑をかけてしまう。俺のせいでふたりの幸せを壊すことだけは絶対にしたくないから。
────ドン。
花火が打ち上がり、夜空がたくさんの花で彩られる。
でも、その次に目に入ったのは唇の距離が0になって重なった江崎くん達のシルエットだった。
「う、そ……」