桜色の涙
泣きながら笑う君
「はぁっ、はぁ……っ」
肩で息をしながら走り続けた。
ここならもう大丈夫。そう思ったところで静かに繋いだ手を離す。
「う……っ、ご、ごめっ、ねっ……」
泣かないで。そう言って頬を伝う涙を拭いたかったけど、俺にはできない。
星那ちゃんが望んでいるのは俺にされることじゃない。きっと江崎くんなんだ。
江崎くんと知らない女子のキスを見てしまった俺達は、しばらく立ち止まってその様子を見ていた。
すると、離れたところにいる江崎くんと目が合ったんだ。
その瞬間、星那ちゃんは俺の手を掴み。
『……迅くん、行こ』
そう言って逃げるように走った。
途中で『星那、待てって……!』と叫ぶ声が聞こえたけど、無視してそのまま走り続けた。