桜色の涙
「……っ」
彼女の目からは涙が溢れて止まらない。
あぁ、苦しい。星那ちゃんが泣いていると俺も辛いよ。だから、笑って。お願い。
「……さよなら、悠大」
呼吸が落ち着いた彼女から発されたのは『さよなら』だった。
その言葉にどれだけの想いを込めたんだろう。今までの彼との思い出がひと言で終わってしまうなんて。
「迅くん、行こっか」
悲しみを隠すように彼女は笑いかける。もう、そんな顔しないでよ……。
耐えきれなくなって、江崎くんに背を向けて足早に歩きだす。彼女はもう振り返らなかった。
今までは、星那ちゃんには彼氏がいるから気持ちを抑えてきた。なんとか隠そうとしてきた。
でも、この状況で手を差しのべないなんて無理だよ。