桜色の涙
震える小さな手に自分のを重ねて絡ませる。彼女は不思議な顔ひとつしないで繋ぎ返してくれた。
あぁ、なんだろう。この感じ。ずっとこうしてみたかった。
星那ちゃんと恋人繋ぎ。夢のような現実に頭がボーッとするけど、これは夢じゃない。
彼女が江崎くんと別れたのも現実なんだ。そう思うと嬉しいはずなのに胸が痛い。
「……星那ちゃん」
花火はいつの間にか終わっていて、さっきよりも暗い。
人混みから抜け出して近くにあったベンチに並んで腰かける。
「わ、たし……悠大と……別れ、ちゃった」
そう言った彼女は必死で笑顔をつくっている。
こんなときくらい泣いてもいいのに。俺の前では強がる必要なんてないのに。
「俺の前では泣いていいよ」
気づけばそう口にして彼女の体を抱きしめていた。