桜色の涙
「でも……あんなに時間を共有してきたはずなのに、悠大はあの子の方が大切なんだよ」
「そんな、こと……」
どうしてだろう。江崎くんなら幸せにできるって思っていたのに。だから黙って見守っていたのに。
星那ちゃんをこんなにも傷つけるなんて許せないよ。
「でも、なんとなくわかるんだ。最近あまり話せていなかったし、私にも原因はあるから」
目を伏せて彼女はそう言う。
やっぱりすごいな、星那ちゃんは。自分の非を認めて、別れたばかりの相手のことを思いやることができるなんて。
でも。でもね。
「俺は本音が聞きたい。無理して笑っている星那ちゃんじゃなくて、心から笑っている星那ちゃんが見たいんだ」
本当は今すぐにでも好きって伝えたかった。このぬくもりが消えないうちに抱きしめたかった。
「そのためならなんでもするから」
俺を利用してもいいから。そんなありふれた言葉でも良かったかもしれない。でも彼女に気をつかわせるのは嫌なんだ。
「ありがとう。でも、私……っ」
「……っ」
────悠大がいないと笑えないよ。
そんな悲痛な叫びに、これ以上ないくらいの痛みを胸に覚えた。
これが現実。星那ちゃんを想い続ける限りここから逃げられない。彼女はいつだって江崎くんを想っているんだから。