桜色の涙
空気が一気に冷たくなる。俺達を闇に誘い込もうとしているんじゃないかと錯覚するくらいに。
『……私、悠大と別れた』
ひと言そう告げた星那ちゃんに、誰も、何も言えなかった。ふたりは驚いて言葉も出ないようだった。
帰り道。夏祭りの帰りとは思えないほどの沈黙で、誰も話す気にはなれなかった。
そして、俺は朝から5組の教室にいる。昨日家に帰ってからたくさん悩んで考えて決めたんだ。
俺が星那ちゃんのためにできること。どうしてもしたいこと。それは、江崎くんにぶつかること。
星那ちゃんはきっと諦めていると思う。それでも俺は伝えたい。おせっかいだと思われても、彼女の胸に秘めた想いを届けたい。
大丈夫、きっと大丈夫、と。自分に言い聞かせながら深呼吸をする。
話があると言ってから、彼は呆れたようにこっちを見たまま。