桜色の涙
ふたりはクラスでもトップの成績を誇っている。
渚は無愛想だけど、最近は前よりも雰囲気が丸くなって話しかけやすくなった。他の人と話している光景も見かける。
星那ちゃんは相変わらずの人気者で、それは江崎くんと別れてからも変わらない。
……でも、そんな星那ちゃんが抱えているものをきっとみんなは知らない。
星那ちゃんと別れてから江崎くんは変わった。
まだ数日しか経っていないけど、見る度に違う女子が隣を歩いている。彼女と付き合っていた頃とは全く違う。
かっこいいから女子達もそれでいいらしく、いつも女子に囲まれている。
それを見て彼女がどんなに苦しんでいるか知らないくせに。
無理してほしくないのに、彼女は気にしていないフリをして笑うんだ。
「……ねぇ!広瀬くんってば!」
「え?」
そんなに自分の世界に浸っていたのかな。回りには少し焦った顔のみんながいる。
「聞いていたか?もう日が暮れる。そろそろ帰るぞ」
そっか。俺が考えごとをしている間にそんな話になっていたんだ。
それにここは図書館。もうすぐ閉館時間だろう。