桜色の涙
どうしてこんなに憂鬱な気分になるのかな。問いかけてみても答えは出ない。
気づけば家にいて、状況もわからないまま今ここでテストを受けている。
ダメだ、あんなに勉強したのに全然集中できないよ。……きっとこれが恋の病。
◇◆◇
「やっとテスト終わったー!」
「そうだね」
みんなはテストが終わった開放感でいっぱいなのに、こんなに暗いのは俺だけだよね。
「迅くん?」
「……な、何?」
急に星那ちゃんに顔を覗き込まれ、慌てて飛び上がる。首を傾げているだけなのに、こんなにも胸がドキドキと音を立てる。
「今日、出かけよう?」
俺の目をまじまじと見て微笑みかけてくれるなんて思わなかった。
「え……えっ?」
いきなりの言葉に驚いて開いた口が塞がらない。好きな人にそんなこと言われるなんて夢みたいだ。
「それなら最近できたアイスクリーム屋さんは?」
そんな橋本さんの提案に久しぶりに胸が踊る。
なんだろう。さっきの気分は嘘だったんじゃないかって思うくらい、今は心が軽いよ。
星那ちゃんは俺の元気がないことに気づいていたのかな。いや、きっと彼女だけじゃない。みんなわかっていたんだ。