桜色の涙
「よし!」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
意気込んで立ち上がると、杏に驚かれて自分の行動が不思議だったことに気づく。
俺ってダメだな。高校1年生が小学1年生に指摘されるなんてどうなっているんだよ。
もうこのことは考えないようにしよう、と自分に言い聞かせて電話をかける。
〈……もしもし〉
「あ、渚?起きていたんだ?」
いつだか自分は寝起きが悪いと言っていた渚に、朝の7時半に電話をかける。モーニングコールにでもなれば、と思ったんだけど。
〈誰かさんに今起こされたんだよ〉
いかにも不機嫌そうな声で言われたら反論できない。
「ご、ごめん……」
〈で、用件は?〉
電話越しだからか少しこもって聞こえる。それとも、布団の中で電話しているとか?って、いくら渚でもそんなわけないよね。
と、勝手にひとりで想像を繰り広げる。いや、これは妄想になるのかな?
とにかく俺の悪い癖。