桜色の涙
「わっ……!杏?」
「お腹空いたー!リビング行こー」
はしゃぐ杏に腕を引っ張られ、半強制的にリビングへ向かう。
テーブルの上には置き手紙と、母さんが作ったらしい目玉焼きに味噌汁。そして昨日の晩ご飯の残りのえびピラフ。
置き手紙には〈レンジで温めて食べてください〉と書かれている。
……またか。憂鬱な気分になりながらも、2人分のご飯をレンジに入れて待つ。
いつからだろう。こんな生活になったのは。
杏が生まれたとき?俺が中学校に入ったとき?それとも、親が離婚したときだったかな。
チン、とレンジが時間を告げ、ラップを外してふたりで食べ始める。
「いただきます」
向かいに座り顔を見合わせた俺達。でも杏の表情は暗いままだった。