桜色の涙

「杏……」


かける言葉が見つからない。どうして小学1年生の子供にこんな顔をさせないといけないんだろう。


あまりにもかわいそうで。でも、俺には何もできなくて。


結局ダメだな。全て俺は中途半端。橋本さんに言われた通り意気地なしなんだ。



「……杏は大丈夫だよ。ママがいなくても大丈夫だよっ」


しまいには幼い妹にこんなことを言わせてしまうなんて。


きっと大人びているわけじゃない。仕方ないと思っているから自分の気持ちを我慢しているんだ。


本当は言いたいはずなのに。「寂しい」「みんな一緒がいい」って。


思えば杏は物心がついてからあまり泣いたことがない。基本的に怒られるようなことはしていなかった。
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