桜色の涙

「いつかまたみんなで出かけようか」


「え……?」


人間は誰だって人には言えない気持ちを抱えている。それを吐き出せない人は少なくないはずだから、俺はそんな人達の居場所になりたい。



「泣くことは悪いことじゃないんだよ。俺の前では我慢しなくていいんだ。母さんには言えなくても俺は聞くよ」


やっと言えた。なんとなくだけど心に灯火がついた気がした。



「……ねぇ、お兄ちゃん。ママはどうしてお仕事ばっかりなの?杏のこと嫌いなのかなぁ……?」


ポツリ、ポツリ。テーブルの上に小さな雫が落ちてシミができる。


「そんなことないよ。母さんは俺達のために頑張っているんだ」


今はまだ受け入れられないかもしれないけど少しでも不安を軽くしてあげたい。
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