桜色の涙

「杏、寂しかった……!パパもいないし、ママも帰って来ないんだもん……っ」


子供のように泣きじゃくる杏。いや、子供なんだけど。


そんな小さな体を優しく、でもぎゅっと抱きしめる。



「もうひとりぼっちは嫌だよっ……!」


悲痛な叫び。それは、母さんには聞こえていない。でも俺だけでもいいから受け止めたい。


そして、すぐには無理かもしれないけど話し合いたい。



「よしよし、大丈夫だよ」


「お兄ちゃんっ」


そっと頭を撫でると小さな手で俺のことを抱きしめ返す。


杏はどれだけ母さんとこうしてきたんだろう。甘える時間はなかったと思う。母さんはいつも仕事優先だから。



「……よく頑張ったね」


笑って言えたかはわからない。目から何かが溢れてきそうで慌てて上を向く。


そう、大丈夫だよ。きっと。
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