桜色の涙
◇◆◇
「あーっ、ちょっと!あたしのなんだけど!」
「……耳元でうるせぇ」
大声で叫ぶ橋本さんとそれに毒を吐く渚。その様子に、俺と星那ちゃんは少し離れたところで苦笑い。
今日はみんなで橋本さんの家に来ている。
『こんなものしかないけど』と言って出されたのは大量のお菓子で、お腹が空いていたらしい渚はそれにすぐ飛びついた。
それを見てさっきの彼女の言葉が出てきたんだ。
「あれ、あの人……」
でも、彼女の呟いたひと言で空気はガラリと変わった。
その視線の先、窓の外には……江崎くんの姿があった。その隣には見知らぬ女子。
「……っ」
傷ついたように息をのんだ音が聞こえた。見なくてもそれが誰なのかくらいわかる。