桜色の涙
「星那」
慌ててトランプを持ってきた彼女を橋本さんは呼び止める。
彼女は何か言いたげな顔をして振り返った。
「無理しないでよ……。あたし達の前で無理して笑おうとしないでよ……」
ハッとしたように彼女は俯く。
きっとこの中の全員が同じ気持ち。そのことに彼女だって気づいているはず。
「……辛かったら、力になる」
いつもはあまり話に入ってこない渚も、今は心配そうな顔をして橋本さんの言葉に頷いている。
そうだよ、俺も力になりたい。その一心で乾いた口を動かす。
「……そうだよ。だって友達なんだから」
“ 友達 ”
自分で言ったはずなのにこの言葉が胸に突き刺さる。
本当は、こんな関係は嫌だよ。近くにいるのにこんなにも遠く感じる距離なんて。