桜色の涙
「広瀬くん……」
渚と橋本さんは俺の気持ちを知っている。そのせいか今の俺の言葉に驚いているみたい。
確かに星那ちゃんのことは好きだけど、俺が好きなのは笑っている彼女だから。
「だって、私にはもう悠大のことを想う権利もないんだよ……?別れてから変わっていく悠大を見ていたら、もうっ……」
どうしてだろう。俺達は確かに成長しているはずなのに、それなのに大きな壁にぶつかってしまう。
そしてそれを壊すことができないんだ。
「……ねぇ、星那。いつまでも悠大くんのことばかり見ていても進まないんだよ」
無言の彼女に橋本さんは言葉を続ける。
「気持ちを伝える気はないんでしょ?」
静かに首を縦に振った彼女の瞳は確かに潤んでいた。