桜色の涙
◇◆◇
「星那ちゃん……っ!」
はぁ、はぁ、と。まだ落ち着かない息のままインターホンを押す。息が切れて肺とお腹が苦しい。
静かにドアが開いたかと思うと体が憧れの香りに包まれる。
……星那ちゃんだ。今、彼女に抱きしめられている。
「迅くん……っ」
苦しそうな吐息とともに俺の胸に顔をうずめる。夢みたいだけど夢じゃない。
あぁ、やっぱり好きだな。
《迅くん、ど、しよ……》
『星那ちゃん?』
それはちょうど昼ご飯を食べようとしていたときだった。
母さんは仕事、杏は児童会館に行っていて俺はひとり。そんな中突然の星那ちゃんからの電話に驚いた。
でも、電話越しでもわかる。泣いているんだ、星那ちゃんが。