桜色の涙
そして今ここにいる。まだ玄関で抱きしめられたまま。
「あの、星那ちゃん……」
「……あ、ごめんね」
困った顔で笑って俺の体から手を離す。それと同時にあたたかくなったはずの体が冷たくなっていく。
離れてほしかったわけじゃない。むしろずっとあのままでいたかった。なんて、そんなこと言えないよ。
「入って」と言われ、静かに足を進めていく。暗い廊下を辿って案内された先は星那ちゃんの部屋らしい。
全体的に女子らしい部屋。でも、気になるのはその真ん中にある……アルバム。
もしかして、これは。
そう思って覗くと予想は当たっていたようで、中には笑顔のふたり─────星那ちゃんと江崎くんが写っていた。