桜色の涙

あぁ、お似合いだな。


丁寧な字で「やっと付き合えた」「初デート」「1ヶ月。お揃いのペアリング」などなど。


1番新しいページには「高校入学。これからも一緒だよ」と書かれている。


でも、どうしてこんなものを。



「さっき、買い物に出かけようとしたら悠大に会ったの」


「え……」


なんでもないように話しているけど、そんな顔していたらわかってしまうよ。どれだけ辛くて苦しかったか。



「相変わらず女の子が隣にいて。私がいたことに気づいていたはずなのに、笑いながら通り過ぎたの……っ」


それって、私なんてどうでもいいってことだよね、と。


静かにこぼれた言葉を俺は聞き逃さなかった。



「悠大はもう忘れちゃったのかなって思うと涙が止まらなくて。気を紛らわすために掃除をしたらアルバムを見つけて。気づいたら迅くんに……」


言いかけた言葉を閉じ込めるように俺は抱きしめた。


もう無意識でもなんでもいい。彼女が俺を必要としてくれるならなんでもいいよ。
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