桜色の涙
「迅くんは辛くないの……?」
「え?」
……なんだ、そんなことを心配していたんだね。
相変わらず優しいな。自分のことで精一杯なはずなのに、他の人のことまで考えられるなんて。
「辛くなんてないよ」
それが俺の本心だった。
星那ちゃんがここにいてくれるなら。星那ちゃんが笑えているなら。ただそれだけでいいんだ。
「でも、私まだ悠大のこと好きなんだよ?写真を見ただけでこんなにも気持ちが溢れるのに、迅くんは……」
「それでもいいよ。忘れなくていいから」
言葉を遮って自分の中の想いを伝える。
「無理して忘れて笑うより、思い出にしてしまった方が楽じゃん」
いつか江崎くんのことを思い出にできる日がくるのなら、そのとき隣にいるのは俺がいい。
他の誰かが隣にいるなんて考えたくないんだ。