桜色の涙

「迅くんは辛くないの……?」


「え?」


……なんだ、そんなことを心配していたんだね。


相変わらず優しいな。自分のことで精一杯なはずなのに、他の人のことまで考えられるなんて。



「辛くなんてないよ」


それが俺の本心だった。


星那ちゃんがここにいてくれるなら。星那ちゃんが笑えているなら。ただそれだけでいいんだ。



「でも、私まだ悠大のこと好きなんだよ?写真を見ただけでこんなにも気持ちが溢れるのに、迅くんは……」


「それでもいいよ。忘れなくていいから」


言葉を遮って自分の中の想いを伝える。



「無理して忘れて笑うより、思い出にしてしまった方が楽じゃん」


いつか江崎くんのことを思い出にできる日がくるのなら、そのとき隣にいるのは俺がいい。


他の誰かが隣にいるなんて考えたくないんだ。
< 96 / 374 >

この作品をシェア

pagetop