僕の恋人
そして玄関のドアを開閉する音が少し遠くから聞こえて来て、あたりは静寂に包まれた。


どのくらいこの場に座っていただろうか。


足がしびれ始めたのをきっかけに立ちあがって周囲を確認してみると、そこに由依の姿はなかった。


茂みから出て相原先生のアパートの部屋を確認する。


ドアは閉められ、先生の姿もなかった。


けれど、車いすと女の子の姿は残されていた。


女の子はコンクリートに頭から突っ込んだまま、ピクリとも動かない。


なにかが妙だ。


俺はそっと歩み寄った。


手にはジットリと汗をかいていて、気持ちが悪い。


近づいていくと、刺激臭が漂ってきて俺はすぐに鼻をつまんだ。


なんなんだ、この匂いは。


風が吹いて麦わら帽子が空高く飛んで行く。


その、すぐそばでウジムシが這っているのが見えた。
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