僕の恋人
☆☆☆

走って走って走って、いつの間にか自分の家に戻ってきていた。


「あら、おかえり」


庭で水やりをしていた母親が笑顔を浮かべる。


「まま……ままぁ……」


あぁ、くそ!


まただ。


どういうわけかわからないけれど、俺たちは大人の前だと言葉が出なくなるんだ。


「なぁに?」


「あのねぇ、ままぁ……」


こんなにのんびりしてる暇はないんだ。


早く、早く伝えないと!


もどかしくなった俺は家の中へと駆け込み、ペンとメモを用意して戻って来た。


「あら、今度はお絵かきの時間? お外へ行くのは危ないから、その方がいいわねぇ」


違う!


そんなんじゃない!
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