僕の恋人
こんなに大変な事を書いているのになんで……?


そう思った時、ふと思い出した。


俺たちの言葉は大人には通じない。


それと同じで、文字も通じないんじゃないのか?


「ぱぱ……まま……あのね、みさきちゃん……がねぇ……あのねぇ」


必死に言葉を出そうとしても、全く出てこない。


たどたどしく、次の言葉が出て来るまでが長くなる。


知っている単語のほとんどが口から出る前に消えて行く。


まるで、誰かに押さえつけられているような感覚だ。


子供はまだしゃべっちゃいけません。


子供はまだ書いちゃいけません。


なんでだ?


俺はもうこんなに色々な事を考え、理解できるようになっているのに。


「そろそろおうちに入ろうね」


母親は俺の体を抱き上げた。
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