さよならを告げたのは
はじまり
貴方と付き合い始めたのは、貴方の言葉がキッカケだった。
*
「オレと付き合ってください」
そんなストレートな告白を、直接受けたのは生まれて初めてだった。
私の目の前で頭を下げているのは、私も良く知る隣のクラスの男子。
池内大翔。
背が高くて、サッカー部の中でもかなり上手いらしい。顔も悪くない。
そこそこモテている人。
そんな彼がどうして私に。
告白を受けて一番に思ったのはそれだった。
「冗談、とかじゃないよね」
「そんなわけ、本気」
「でも……」
言いかけ聞いてもいいのか迷い、口を瞑った。
言いかけた内容が気になるのか不思議そうな顔をする池内。
聞かなければ話は進まないと判断して、口を開いた。
「……七海ちゃんと付き合ってたんじゃないの」
「別れた。三浦、知らなかった?」
「知ってたけど、」
別れたって話というか噂は、友達から聞いていた。
それも噂だったし半信半疑であんまり信じてはなかったけど。
別れたのが本当だとして、それはついこの間のことで。
「からかってるだけでしょ?」
「そんなわけねえって」
「だって、別れたっていっても最近じゃん」
「そうだけど」
「……信じられないし、ごめん」
その言葉を発した後、流れた沈黙。
友達に言えば「もったいない」とか言われるんだろうけど。
軽い人と付き合って捨てられるなんてごめんだ。
それなら最初から付き合わない方がいい。
あんまり静かだから不自然に思い、落としていた視線を池内に向けた。
瞳は真っ直ぐに私を見つめていて。
合わさった目に心臓が音を立てる。
「オレ、諦めねえから」
「え?」
「絶対お前振り向かせるから」
真剣な顔でそう言って、池内は去って行った。
唖然としてその場から動けない私。
胸が高鳴ったような気がした。