・喫茶店『こもれび』

三好さんから見たら、年下の私は子供扱いするに値するはずの小娘だろう。
なのに、真面目な話から砕けた話まで、三好さんは私の話にいつも耳を傾けてくれたから。

思ったことを三好さんには素直に口にすることができる、自然体の私でいられたことが一番大きかったと思う。
一番かっこ悪い場面を最初に見られてしまっていたし。


店の雰囲気もさることながら、店主である三好さんに惹かれはじめていた私は、憧れている気持ちを隠しながら。
しょっちゅう『常連の専門学生』として、店を訪れていた。


いつからだろう。
この『喫茶こもれび』で働きたいと思い始めたのは。


最初は居心地が良くて、話を聞いてくれる年上の三好さんがお兄さんのように感じて。
家でも学校でも、どこか自分を偽って過ごしている私が、唯一素直になるれる場所だったから。

お店に足を運ぶたびに感じていたのだ。

いつも独りで窓際の席に座り、本を片手にのんびり珈琲を飲んでいるおじいさん。

毎週、同じ曜日にお友達数人とお喋りしているご婦人の中の一人が、ひょっこり別の曜日にやって来て。店内に流れている音楽に耳を傾け、どこか懐かし気な表情を浮かべている姿。

カップルやサラリーマン、近所のママさんらしき女性。
お店に来る人達の性別も年齢層は様々だけど。
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