・喫茶店『こもれび』
きっと、私以外の誰かも『こもれび』を素の自分に戻れる、秘密の場所にしているのではないかと。
こうして素敵な場所を提供してくれている三好さんに、心を開いている人も沢山いるのではないかと思ったのだ。
そんなことを考えてしまうのは、私自身がその中のひとりだからなのかもしれないけれど。
なんの取り得も無い私だけど。
この店に訪れる人や三好さんを見ていて、自然に考え始めただけで。
こんな空間で働きたいと思い始めたきっかけなど、あるようでなかったのかもしれない。
就職活動をして何処かの会社に属すれば、そこで出逢う人もいるだろう。
けれど、仕事仲間や仕事相手として出逢うのではなく。
私が三好さんと出逢ったように。
誰かの生活の、他愛もない日常の中で出逢ってみたい。と思ってしまったから。
この『こもれび』を訪れた人と出逢い、その人の日常に触れてみることができたら。
あの日から、三好さんが私の心を癒してくれたように。
今度は私が誰かの心を癒してあげられないかな、と思ったの。
願わくば、誰かを癒してあげている三好さんを。
私が癒してあげることが出来たらいいのに。なんて、生意気なことを思ってしまったことは、口が裂けても言えないけれど。
三好さんの傍で働きたいと思ってしまったの。
そう思ってしまったら、他社に就職活動へ出向く気になどなれなくて。
こうして、三好さんの元に通い詰める日々となっただけのこと。
「いいよ」と言ってくれる、その日まで諦めずに。