・喫茶店『こもれび』


「三好さん、お願いします。アルバイトでも契約社員でも構わないから……」


カウンター越しの三好さんは、お湯の沸いたポットを手に取り。
手元のティーポットにお湯を注ぎながら口を開いた。


「アルバイトの給料で食べていけるわけがないだろ? もっと真面目に就職活動しなよ。採用試験だって、いくつか受けたんだよね? 内定が出た会社に行きなよ」


この店には今まで通り、客として来ればいいじゃないか。と正論を口にされてしまい、返す言葉がなくて。
バッグにしまっていた書類を鷲掴みし、カウンターテーブルの上に広げた。


確かに、三好さんの言う通り。
採用試験も数社受けていた。でも、それは通っている専門学校が毎年卒業生を送り出している企業で。
いわゆる採用枠が設けられている「コネ」入社ってやつで。

私が真面目に就職活動をしていないことに気付き、就職浪人生を排出しないために半ば強引に学校側から受けさせられた会社だ。

そんな会社に入っても、愛着など沸くわけがない。


「見て、不採用通知。これも。こっちのも。私、大学受験の時と同じなの。今のところ、受けた会社は全敗!」

「嘘だろ?」


不採用通知を手に取り、各社の書面に目を通している三好さんに向かい追い打ちをかける。
絶対に三好さんが私を受け入れてくれるであろう、ダメ押しのひとことを。
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