・喫茶店『こもれび』


「大学もダメ、就職もダメ、こもれびもダメ。私は誰にも必要とされてないのがよく分かった。役に立たない人間なんだよね。こんな私だから、ここで働かせる気になってくれないんでしょ?」


優しい三好さんだ。
ここまで言えば、絶対に「いいよ」って言ってくれるはず。
卑怯だけど、どうしても首を縦に振ってほしいから……。


「そんな風に卑屈になって自己評価しないほうがいい。彩夏ちゃんの人生は、まだまだこれからなんだから」

「だって、ホントのことだもん。ここで働かせてもらえなければ、就職浪人決定だと思ってるし」


口を尖らせ、三好さんを恨めしそうに見つめると。
私の視線から逃れるように目を逸らし、三好さんは右手を唇に当て黙り込んでしまった。


そんな風に考え込んでいる横顔も、結構好きなんだよなぁ。
伏し目がちにしていると、長いまつげがよく分かって触れたくなるし。


なんて、切羽詰まっている表情をしながら三好さんの様子を眺め、思っていた。
我ながら嫌な確信犯だと思う。


大学受験に失敗し、付き合っていた彼と別れた時は、まだ高校生だったけど。
もう、高校生だった頃の私じゃない。
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