・喫茶店『こもれび』


あれから沢山の時間が過ぎて行った。
その時間の中で、三好さんの存在は「こもれびのマスター」から「特別な人」に変わっている。

私にとって特別な人。
それは、色んな意味で……だ。


「私、ワガママ言ってるかな」

「そうだね」


否定してくれることを期待していたから、若干ヘコむ。
三好さんは、基本優しいけれど。
結構、はっきりと口にしてくる時もあって。
全面的に甘えさせてくれるわけではないのだ。

優しいけど、イマイチ掴みどころのない三好さんだから。
余計に気になっちゃうのかもしれない。

本当は、なにを考えていて。
何を思っているのか、とか。


今まで私のことを気にかけてくれていたのは、三好さんにとって「大切な客」だから?
それとも……。なんて、考えてしまうのだ。


三好さんの胸の内を知りたい。と思ってしまうの。


「ご両親は? 彩夏ちゃんのご両親は、彩夏ちゃんの就職について何も言ってないの? 将来有望なエリートが集まっているような、大手企業に就職してもらいたいとか」

「言ってない。私の好きなようにしなさいって。とにかく親のすねかじりだけはやめてくれ、どこかに就職だけはしてくれって言われたくらいかな」

「でも、ここで働くとなると。まずはアルバイトとしてだよ」
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