・喫茶店『こもれび』
三好さんの前で「少しでも女らしい所を見せたい」なんて下心満載だったから、罰が当たったのかな。
「トントン」とリズミカルな音が聞こえ、手際よく食材を切っている三好さんの姿が目に飛び込む。
ううっ。これじゃあ、ただの足手まといじゃん。
せっかく働かせてくれている三好さんに申し訳ないな。
でも、お客さんが来ない時って基本暇なんだよなぁ。
などと偉そうなことを思いながら、包丁捌きがさまになっている三好さんの姿がカッコ良くて。
見とれてしまうダメな私だった。
自己嫌悪に陥りながら、ションボリ気味にカウンターの脇で棒立ちしていると。
ひとりの女性がドアを開け来店した。
女性が店内を見渡し、窓際の一番隅の席に腰をおろすのを見届けてから「いらっしゃいませ」と、グラスに入ったお水をテーブルに運ぶ。
サラサラな黒髪。
口元に少し赤みのある口紅を乗せているだけの薄化粧。
華奢な体つきに、とろみのあるワンピースを身に纏っていて。
見ているだけでも儚げで、今にも消えてしまいそうな透明感のある女性だった。
「ご注文がお決まりの頃、お伺いいたし……」
「アイスティーを」
「あ、はい。アイスティーですね」