・喫茶店『こもれび』
ランチタイムは、三好さんが予想していた通り常連客で賑わい、慌ただしくカウンターと客席を往復する私は、てんてこ舞い状態となっていた。
「3番テーブル、ナポリタンとブレンド出来たよ」
「はい! 只今っ」
「彩夏ちゃん、こっちにお水頂戴」
「はーい、今すぐっ」
数少ないはずの客席なのに、満席になるとひとりじゃ到底対応しきれなくなってしまう。
こんなことを毎日、三好さんは独りでこなしていたなんて、スゴイとしか言いようがない。
若干パ二くっていた私を見かね、常連客の一人がカウンターに置かれた冷水ポットを自ら取りにやって来た。
「あー、すいません。今持っていきますから」
「いいよいいよ。焦んないで、出来ることはセルフサービスでやるから」
「でもっ」
「お客様にそんなことまでさせることは出来ません」と口を開きかけた時「忙しい時は、いつものことだから。彩夏ちゃんも自分の出来ることやって」と、カウンター内で動き回っている三好さんが顔だけ私に向けた状態で言った。
「え? 本当に?」
三好さんへ再確認する私の肩に手を置いた常連のお客様が「そうそう。何事も助け合い、助け合い」と、ニコニコしながら「忙し過ぎて三好君にぶっ倒れられちゃ、こっちが困るからな」と言葉を続けた。