・喫茶店『こもれび』
「そうよね。三好君あっての『こもれび』だもの。私達の集まる場所がなくなっちゃう」
そう言ったご婦人のお客様に「いつもありがとうございます。おかげ様で助かってます」などと、シレッと笑顔で返している三好さんを、驚きの顔で見入っている私に気付いた常連さんの一人が言った。
「でも彩夏ちゃんが来てくれるようになってからは、だいぶセルフも少なくなったよなぁ」
「そうね。キッチンとホールの両方をこなすなんて、どんなに三好君の手際がよくても無理よね」
「ははっ。おっしゃる通りです」
苦笑いしている三好さんは、会話を続けながらも次々にオーダー品を完成させていて。
いつの間にか、カウンター上には出来立ての料理やドリンク類が並べられていた。
「うわぁ、運ばなきゃっ。こんなに溜まっちゃってるし」
せっかく三好さんが作った料理が冷めちゃう。と慌ててトレイに料理やドリンクを乗せ、各テーブルに届けた。
ランチタイムのピークが落ち着く頃、会計をして帰ってゆくお客様もちらほら出てくる。
「ありがとうございました」とおつりを手渡し、その場からお客様を見送った。
「お会計、お願いします」