・喫茶店『こもれび』

「にしては、初めて見る顔だった気がするけど」と独り言のように呟く私に、三好さんは教えてくれた。


たまに、ふらりとやって来ては窓際の席に腰を下ろし。
アイスティー一杯で数時間過ごした後、帰ってゆくらしい。


「彩夏ちゃんが店に来ていた時間とは違う時間帯に来店していたから、知らなかっただけだよ」

「そっかぁ。まだまだ知らない常連さんがいるんだね」


……って。
あれ? それじゃあ、彼女は誰かと待ち合わせしていたわけじゃなかったってこと?


「恋人を待っているんじゃなかったの? てっきり……」

「余計な詮索はしちゃダメだよ」


即座に注意勧告を受け「うぐぐっ」と口を噤み身を縮める。
だよね。
お客様の個人情報だの諸事情だの、喫茶店のイチ店員が知りたがっちゃいけないよね。


「目の前に居る相手のことだけを見て接客すべし」ってことなんだな。


彼女の座っていた客席の椅子を直し、テーブルに残されている空になったグラスを下げる。
布巾でテーブルを拭きながら、ふと彼女が眺めていた窓の外に目を向けた。
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